sunakochanの日記

頭の中で増大する文章の渦を整理する

ボクの記憶・前

 

 

ボクが高校生の頃。

修学旅行で古い神社が沢山ある町へ行った。

修学旅行は二泊三日でその日は最終日だった。

最終日の予定は、朝から自由行動で

事前に決めた2人以上の班で市内を回り、

16時に駅に集合し、帰るというものだった。

 

ボクの班は幼なじみのAと、

高校から知り合ったB。

2人とも部活が同じで気のおける仲だ。

 

8時半に宿で解散してからボク達は、

まず先生のいる喫茶店で、

名物のソフトクリームを食べながら

その日の予定を相談した。

相談の結果、ひとり一個ずつ行きたい場所を

提案して3つの場所に行くことになった。

 

ボクの行きたいところは本部から近い、

古いお寺。

AとBは本部となっている駅前の喫茶店から

それなりに離れたところにある

商店街沿いの店をそれぞれ提案していたので、

遠いところへ最初に行き、

集合場所となる駅に戻りながら、

観光をしよう。

ということになった。

 


早速バスに乗って出発した。

駅からまっすぐ大きな一本の通りが

伸びていて、そこを右折するとき、

丁度目の前にとても大きな鳥居と

神社のような建物が目に入った。

 

ふと、懐かしさがこみ上げてきた。

 

この町には来たことはないと記憶しているが、

とても懐かしく感じて、

是非ここには寄りたいな、と思った。

ボクが提案したお寺がこの近くだから、

差し支えない。

観光はこちらの建物も含むようにしよう。

と勝手に決めた。

車通りの多い、大通りに面しているのに、

鳥居の前には色とりどりの花が咲いていたため

そこだけまるで世界が違うようで

とても綺麗だった。

 

バスを降りて、ボク達はまず

商店街をぶらぶらと見て回った。

商店街のお店は予想外に色々置いてあって、

かなり楽しめた。

ボクは、大好きなアニメのご当地ストラップを

コンプリートして、ホクホクしていた。

12時半を回った頃には一通り楽しみ、

商店街で昼食をとりながら、

これからどうしようか。となった。

ボクは行きに車窓から見た鳥居と

建物のことを話した。

Aは、少しばかり考えた後

「あぁ、いいんじゃない。いこうか。」

と言ってくれたので、早めに帰路につき、

途中でそこに寄ろうということになった。

 

移動する車中、先ほどの会話を考えた。

ボクが鳥居を提案した時、

妙に考えたような顔をしていたAを思い出し、

隣の席で、ぼうっと音楽を聴くAに

Aもこの場所に覚えがあるのかと尋ねたが、

「いいや、ないよ。」と言われた。

 


バスに揺られて20分ほどで、鳥居が見えた。

鳥居は見ているとなんだかとても懐かしくて、不思議とまた、暖かい気持ちになった。

 

ふと隣を見ると、

Aが何故か目に涙を浮かべていて、

少し驚いた。

でもなんだかこの鳥居は

人の心を動かす雰囲気を持っていて、

ボクも少しだけ視界がぼやけた。

鳥居の周りでは相変わらず

綺麗に花が咲いていて、

中では、午前中は居なかった、

ボクより歳下の子供達が何やら遊んでいた。

あの子たちも、修学旅行かな?

と思っていると、その中の一人と目があった。

「!?」

ボクは驚いた。

なぜならその子はボクの知っている子だったからだ。その子だけではない。

そこにいる小学生は皆、

ボクの知っている子だった。

 

降りなくては!

 

咄嗟にそう思った。

A、Bには先に戻っていてと伝えた。

 

Aは窓の外を見て涙を流していた。

そうして、Aは「喫茶店で待ってるから。」

と言った。

 

ボクはバスを降りて

夢中で鳥居の方に向かって走った。

皆、ボクのことを待っていてくれたみたいだ。

駆け寄ってきてくれた皆と

鳥居の前で抱き合った。

皆とても悲しそうな顔をしている。

ふと思った。

 

でもなんで皆こんなに幼いんだろう。

そう思ったとき、不意に大きな音がして、

角からバスが飛び出してきた。

 

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